「私は政治家である。」そう自称した瞬間からその方は政治家なのである。小説家、ジャーナリスト、市民活動家、なんとか評論家と同じように、すき勝手に参入できる。されどモノになるには、地を這い、足蹴にされ、呆然と天を仰ぐ思いをし、自らの非力をいやというほど判ってやっと理解できる何かがある。これ以外に私達の生きている世界の多様性と厳しい現実を身に沁みさせる方法を僕は知らない。
机に座って政治学、思想史を一生懸命勉強したり、高名な先生のお話を聞いたりしてパクってみても、それは政治学を研究したに過ぎない。人々が生きる世界の現実を高飛車に「それではだめだ」と説諭しても「いったいおまえは何様だ。おまえの言葉は何も響かない。」でしかないし、ポスター貼っていても、やってるようにみせておこうという、お札利用の人もいて、実態を知り愕然とする時もある。仕事、雇用、付き合い、福祉施設入居、生活保護申請、助成金、学校の先生の赴任先までの生き抜くことへの願いが渦巻く。
遷ろうものに自分の生涯を委ねて生きていく覚悟は、この地に生きる人々への自分の思いが支え続けるのである。
決して投げ出せないと。 |