佐藤けんじ

佐藤けんじ 道南発、日本の未来。

佐藤けんじ
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No. 55 /2006/11/22
民営化ビジネスの泡沫

また新しい電気通信会社の経営危機が報じられている。
いつからこういう業界になったのだろうか、公益事業と呼ばれ、110番や119番、警察や金融のネットワークなどは人々の命や暮らしをささえる大切な仕事であるという矜持が、地味で不器用だけど守り続ける価値があると信じる人たちの電気通信業界であった。
ポケベルが爆発的な人気を博した時に変だなっと感じた、インターネットと携帯の大きな波が必需品を奢侈品に変えた。技術革新のすごさと対応する通信利用形態の変化である。経営の戦略的判断はこれを追うというものだった。インターネットの普及は交換機と伝送路のインフラ産業をIP網という手軽なものにみせ、よりによって素人が投資でき、収益が得られるビジネスチャンスであるかのような錯覚を、規制緩和ビジネスの御旗が裏書した。怪しげな会社でも経営能力の無いヒトタチでも平気で上場できるような新興株式市場は玉石混交状態である。
ベンチャーファイナンスにのっとられたと叫ぶ経営者も後を絶たない。
電気通信事業は、先行する設備投資額は決して少ないものではない、利用者が乗数的に増える必要性がマルチ商法との親和性をもたらし、そちらからの参入は充分予想できる。ただ共通点はネットワーク産業の特性というだけのことである。
六本木ヒルズに事務所を構え、真夜中にドンペリを開け芸能人とパーティーを行うのはコンテンツという流行の中身の産業、インフラじゃないうわさ、世間話、ゴシップ、流行を商売に結びつける新たなアイデアを見つけた産業のヒトタチである。ただポルノ系や援助交際系から出発して、小金をもってビジネスを大きくする「けもの道」要素が絶えずある。つまりどんな需要であっても応じて儲ける没規範性がある。でなければ製品の革新と成長スピードをキャッチアップできなくなる怖れが彼らを駆り立てるのである。
ITを学ぶことも大切ではある、ただ簿記や会計の商業らしさが教える地味な規範性を忘れるべきではないと思う。

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