佐藤けんじ

佐藤けんじ 道南発、日本の未来。

佐藤けんじ
コラム
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No. 42 /2006/3/15
ロングテールと図書館と

函館中央図書館に行ってみた、夕方であったせいか、多くの制服を着た学生が出入りしており、大方は充実した漫画の蔵書を読んでいた。なかなかの人気である。開架式の一般図書をズーとみてみた、久しぶりに以前、本を売りに行った古本屋を見ているような気になった。来場者総数を増やすためには漫画や雑誌が重要だろうし、うちそろう新書や文庫はゲオ的空間のなじみやすさに整然とした秩序を与えている。
一方で図書館でしか手に入らないシリーズ物や、絶版になったりしているものもあってほしいし、またヤングという分類は高校生向けの入門書の類なのか意図が掴めなかったりもする。公共図書館はかくあるべしといった威嚇する蔵書の威厳よりも、手軽に疲れを癒してくれたり、時間をゆったりと蕩尽できる快適なスペースを求める欲望応じて生き延びるということなのだろうか。
近頃、IT関連ではホリエモンだけでなく、ロングテールマーケティングという話を耳にはさむ方も多いと思う。アマゾンというネット販売の書店で売り上げの57%がいわゆるヒット作ではない、専門書やニッチ的な分野の書籍販売からの収益となっており、20%の売り上げから80%の収益を上げるという法則性に、疑問を投げかける事例として喧伝されている。わずかづつしか売れない230万品目にも及ぶメニューを、陳列しなくてもよいという固定費削減ができるネット販売ならではの効果とも思う。通り過ぎるメガヒットを追いかけたり、〜学を打ち上げるより、街の人々が奏でてきた通奏低音に集積している知の流れを読み取り、クラスター形成の萌芽を表出させてみたい。
公共図書館が果たす役割は暗黙知の表出化要望へのサポートであり、形式知の連結化を支え、体系化することを地道に進めことにもあると思う。○×都市構想を進める人々に公共図書館はどのように取り入れられているだろうか。地域の知を支える身近なインフラである。この街からは大きな本屋さんが無くなってしまった。手元にとり、ランダムアクセスできてこそ、目が肥えるのだが。アマゾンにたよる日々は、失敗経験の積み重ねであり、どうしても確実な専門性を書籍に求めることになる。わたしもやはりこのロングテール効果に貢献している一人である。

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