佐藤けんじ

佐藤けんじ 道南発、日本の未来。

佐藤けんじ
コラム
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No. 34 /2005/8/28
今を駆け抜ける

民主主義が当たり前のように是認される考えであることだと、ぼくらの世代は思ってる。けど、時々その要求レベルの過酷さ、求められる智恵の抜け目無さ、うつろう情念の行方、追いかけ続けてもとどかない、何時もほんの少し自分の指の先にあって、触れることすらできない陽炎のような。
先人が創り上げた文明の技法は、まだまだ私には理解しきれない存在である。2000年の歳月を生き延び、磨き上げられたはずの概念のしたたかさは、とても原初的な、人々の情念や感情を呼びさましてくれる。理性に根ざした合理性や、冷静な判断力を超え、人々の琴線にふれる何かが問われるような気がしてならない。
それでも、私たちは民主主義より優れたといえる統治の仕組みをまだ見いだしえない。アテネ民主主義の黄金期に、繁栄をもたらしてもなお、陶片追放にあったペリクレスは何を思ったろうか。
街頭演説を聞いてくれたおばあさんに、握手をしたくて走っていったぼくの中を、そんな風が通り過ぎていった。

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